ダイレクト・クリアリング
Direct Clearing
顧客がクリアリング・ブローカーを介さず、清算機関に直接ポジションを持つ形態。ブローカーによる与信(日中証拠金の立て替え)が構造から外れる代わりに、顧客自身が即時に証拠金を差し入れられることが前提になる。初版 第7章第5節で扱った論点で、2025年以降は米国の予測市場を通じて制度の側から具体化した。
An arrangement in which the customer holds positions directly at the clearinghouse, without a clearing broker as intermediary. Broker-extended credit — the fronting of intraday margin — drops out of the structure; in its place, the customer is assumed to be able to post margin instantly on its own. This is the issue taken up in Section 5 of Chapter 7 of the first edition; from 2025, U.S. prediction markets gave the arrangement concrete institutional form.
仲介者を外せば与信コストと手数料が消える、と引き算で語られがちです。しかし消えるのは資金の立て替えまでで、清算参加者が顧客に対して持っていた権限は残ります。注文を拒否する自由、ポジションの上限と超過時に建玉を強制的に閉じる権利、清算機関の所要額を上回る証拠金を求める権利です。顧客確認やマネーロンダリング対策、顧客資金の分別管理、参加者破綻時のデフォルト管理を誰が執行するのかという問いも残ります。レバレッジをかける形で与信の代わりに置かれる自動ロスカットが担うのも、早期の機械的な介入だけです。入口の審査も、日中の突発的な資金手当ても、顧客のポートフォリオ全体の把握も代わりません。しかも機械的な損切りは執行可能な価格までは保証せず、流動性の薄い時間帯に一斉に発動すれば相場そのものを押し崩します。論点は、残るこれらの権限と責任を清算機関・直接参加者・決済銀行のいずれへ再配置するかにあります。
- 正式名称
- Direct Clearing
- 分類
- 清算参加・口座
- 関連語
- Client Clearing、Auto-liquidation、Prediction Market、Intraday Margin、Fully Collateralized and Prefunded
- この語を扱った稿
- ダイレクト・クリアリングの制度化:与信の有無で何が変わり、何が残るのか、FCMを経由しない清算では、誰が法的義務を担うのか――リテール向けダイレクト・クリアリングに残る制度上の懸念
この語はクリアリング用語集の一項目です。柳沢 俊『デリバティブ・クリアリングのすべて』(M∀NUS PRESS)には無く、公開している稿のために足した語です。 This term is an entry in the Clearing Glossary. It is not in the first edition of Shun Yanagisawa's book (M∀NUS PRESS) and was added for a published piece.
英語の説明は、日本語の定義に合わせてこの用語集のために起こしました。The English definition was written for this glossary to match the Japanese one.
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